安全ブレーカは定格電流が20Aなのにコンセントは15Aしかありません。
電線では加熱や発火を防ぐために、ブレーカーの定格電流以上の許容電流の太さを使うのに、コンセントは違います。
発熱、発火の危険性があるのに安全装置が無く、対策が「注意しましょう」だけなのは何故か気になったので調べてみました。
15A以上のコンセントは存在する。
定格電流が15A以上のコンセントは存在します。
20A用のコンセントは穴の形が違うので普通のプラグは使えませんが、15A・20A共用のコンセントなら普段のプラグも使えます。
15A対応のコンセント 20A対応のコンセント 15A-20A共用のコンセント
「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈」-「別表第四 配線器具」-「6.接続器」より
15Aと20Aの違い
15A用、20A用、および15A・20A共用のコンセントをPanasonicのカタログから比較してみました。
15A | 20A | 15・20共用 | |
---|---|---|---|
価格 | 190円 | 350円 | 320円 |
送り端子 | あり | なし | なし |
参考型番
- 15A:WN1001SW
- 20A:WN1221K
- 15・20A:WN1821SW
価格について共用のコンセントは15Aより少し割高ですが、もともと低価格なので十分安く思えます。 20A、共用コンセントには送り端子がありません。1つの回路には1つのコンセントしか設置しないように作られています。送り端子がなくても電線だけで分岐ができるのでコンセントを複数つけることはできますが、製品として1つの回路に複数の20A、共用コンセントをつけるは推奨されていないようです。 20Aのコンセントを利用する場合、1回路に1つとなるのでブレーカーと電線の数が増えて、回路数によっては大きい分電盤が必要になり、数千円の差額になってきます。 安全性と利便性、使用年数を考えれば十分安く思えますが、共用コンセントは一般に広まっていないのでコストだけが原因ではないようです。
仕様書の比較
Panasonicの商品仕様書を比較してみます。
仕様書の性能試験結果
15A | 20A | 15・20共用 | |
---|---|---|---|
温度上昇試験 | 30°以下 | 40°以下 | 15A: 30°以下20A: 40°以下 |
ヒートサイクル試験 | 8℃以下 | 8℃以下 | 8℃以下 |
15Aコンセントの試験結果と共用コンセントの15A試験結果が同じになってます。「以下」と幅ある書き方なので正確に同じとは限りませんが、近い性能はあるようです。
温度上昇試験について
温度上昇試験とは周囲温度が5〜35℃の場所で、定格電流を流して温度上昇が安定したときの温度を測定します。
15Aの試験結果である30℃以下の場合、周囲温度を加えた35〜65℃が測定部の温度になります。
20Aの試験結果である40℃以下なら45〜75℃になります。
75℃は高温に思えますが、製品仕様書の耐熱は100 ℃±3 ℃で1時間なので使用に問題ありません。
ヒートサイクル試験について
ヒートサイクル試験とは20A以下の機器では、周囲温度が15〜35℃で
- 定格電流の1.5倍を通電する。
- 45分休止する。(通電と休止で1サイクル)
- 1と2を125回繰り返す。
そして125回目の温度上昇値が25回目の温度上昇値より8°を超えなければ合格になります。
15Aのコンセントなら22.5Aを、20Aのコンセントなら30Aを流し、125サイクル行います。
かなりの耐久性があるように思えますが、25サイクル目の温度上昇値に規定はなく、温度差が8℃を超えないか見るだけで、何度まで上がっているのかわかりません。ですが試験を125回行える程度の耐久性はあるようです。
参考:JIS C 8306-1996 配線器具の試験方法.
配線用遮断機の動作と試験電流の比較
配線用遮断機の動作特性電流とヒートサイクル試験の電流を比較してみます。
20Aの配線用遮断機
- 25Aで60分以内に動作
- 40Aで2分以内に動作
15Aコンセントのヒートサイクル試験
- 30Aで45分を125回
電流値が異なるので一概には言えませんが、15Aのコンセントも20Aのブレーカーが動作するまで十分に耐えられるように思えます。
Panasonicの安全ブレーカー「BS1111」(定格20A)の仕様書から動作特性曲線を確認したところ、25Aの電流では1分から20分の間で動作する仕様になっていました。ヒートサイクル試験の30Aでは目分量ですが30秒から8分程度で動作するようです。
参考:「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈」-「別表第四 配線器具」-「3 開閉器」-「(2)性能」-「ト 過電流引きはずし特性」
コンセントと電線
内線規定により、1.6mmのVVFを使えるのは電線の長さが20m以下で15A以下の受け口を施設する場合です。 20Aと15・20A共用コンセントに繋ぐ電線は2.0mmのVVFを使用します。
まとめ
15Aのコンセントは20Aが流れても直ちに損傷するほど弱くはないようです。 20Aのコンセントが普及していないのは、15Aのコンセントでも使用に十分耐えられるからと考えられます。